「保険証券、最後にいつ見ましたか?」──年末にやっておきたい、生命保険と相続の棚卸し
「そういえば、保険証券ってどこにしまったっけ」――11月から12月にかけて、生命保険料控除証明書がポストに届くこの時期、ご家庭でそんな会話が出ることも多いのではないでしょうか。実は相続対策の観点から見ても、年末は生命保険を棚卸ししておく絶好のタイミングです。当事務所でも、この時期になると「保険をうまく使って相続税を減らしたい」というご相談が急に増えます。
本記事では、税理士として実際にお受けしているご相談事例も織り交ぜながら、年末までにご家族で確認しておきたい生命保険の見直しポイントをお伝えします。
年末が「保険と相続」の見直しに向いている3つの理由
生命保険料控除証明書がポストに届き、契約内容と自然に向き合える時期。他にも、年末ならではの理由が重なります。
• 帰省などで家族が集まり、相続の話を切り出しやすい
• 控除証明書のおかげで「どの保険会社に加入していたか」を思い出しやすい
• 翌年の生前贈与・保険活用のプランを、落ち着いた時期に組み立てられる
北海道のお客様から特によく伺うのが、「息子が本州で暮らしていて、なかなか相続の話ができない」というお悩みです。年末年始は、そうした遠方のご家族と、テーブルを囲んで落ち着いて話せる数少ないチャンスでもあります。
「相続対策としての生命保険」が持つ、税金以外の価値
「保険は相続税を減らすため」とお考えの方が多い一方で、実務でご相談を受けていると、税金以外の効果でご家族から感謝されるケースがたくさんあります。まずは価値の全体像を整理してみましょう。
① 遺産分割で「もめない」ための最初の一手
亡くなった直後の預金口座は凍結され、遺産分割協議がまとまるまで自由に引き出せません。一方、生命保険金は指定された受取人が単独で請求できるため、この分割の議論から切り離してお金を動かせます。特定のお子様やお孫さんに、確実にまとまった金額を残したいとき、遺言書と組み合わせて設計するのが定番の使い方です。
② 相続税の支払いに困らない「現金クッション」
「土地や自社株は多いのに、現金は意外と少ない」――北海道でも、そうしたご家庭は珍しくありません。相続税は原則として現金一括納付です。ここで受取人指定の生命保険金は、手続きが比較的スムーズで、納税資金を速やかに用意できる仕組みとして重宝されます。
③ 預貯金では使えない「非課税枠」というボーナス
同じ1,000万円を、預金として残す場合と、生命保険として残す場合では、相続税の計算結果がまったく異なります。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」まで課税されない特別枠があるためです。たとえば相続人が4人(お母様とお子様3人)のご家庭なら、合計2,000万円までを相続税ゼロで受け取れる計算になります。この枠は、預貯金には存在しないボーナスのようなものです。
ご相談で多い「保険と税金のミスマッチ」3つのケース
契約書のちょっとした違いで、かかる税金の種類が丸ごと変わってしまう――これが生命保険の怖いところでもあります。当事務所でよくお受けするご相談を、3つのケースで見てみましょう。
ケース①「お父様の保険なのに、お母様が保険料を払っていた」
契約者はお父様、被保険者もお父様。ところが、実際にはお母様の口座から保険料が引き落とされていた、というパターンです。この場合、お父様が亡くなって受取人のお子様に保険金が入ると、「お母様からお子様への贈与」と見なされ、贈与税がかかる可能性があります。相続税より税負担が重くなる典型パターンです。
ケース②「お子様名義の契約だけど、実質はお父様の保険」
証券上はお子様が契約者。ただし引き落とし口座はお父様のもの、というケースもよく見かけます。この場合、実質はお父様の財産として扱われ、いわゆる「名義保険」として相続税の対象になり得ます。名義預金の生命保険版、と考えていただくと分かりやすいかもしれません。
ケース③「お父様が契約者・被保険者、受取人がお子様」
3つのケースの中で、最も相続税との相性がよい設計です。保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象にはなりますが、非課税枠500万円×法定相続人が使えます。多くのご家庭で、まずはこの形を軸に検討することになります。
年末までに確認したい、5つのチェックポイント
• 受取人は「今の」ご家族構成に合っているか(離婚、逝去、疎遠などで変わっていないか)
• 契約者と、実際の保険料負担者は一致しているか
• 非課税枠 500万円×法定相続人 を使い切れる契約になっているか
• 保障額は、想定される相続税や当面の生活費として足りているか
• ご家族が「どこにどんな保険があるか」を把握しているか
特に5番目は、実務でも見落としが多いポイントです。ご相続の場面で「実は保険に入っていた」と後から判明し、時効ギリギリで請求されるケースもあります。保険会社名だけでもリストにして、ご家族と共有しておくと安心です。
おわりに|「テレビを消して30分」が、家族の負担を減らす
年末、家族が集まった時間に、少しだけテレビを消して30分。保険証券を並べて、受取人と保障額を確認してみるだけで十分です。難しい税務判断をその場ですべて済ませる必要はありません。「あれ、この受取人おかしいかも」「この保険、誰が払っていたっけ」――そんな小さな気づきを1つでも見つけて、翌年の相続対策のスタート地点にしていただければと思います。
当事務所は札幌で相続税を専門とする税理士法人として、生命保険を活用した相続税対策や、契約形態の見直しについてのご相談を随時お受けしています。「うちの場合はどう見直すのがベスト?」と気になった方は、初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
執筆者:阿部 拓未