相続税の脱税行為とは?どうしてバレるのか?時効、ペナルティについても

  • 相続ブログ

はじめに

平成27年の相続税に係る基礎控除額の引下げにより、お金持ちだけにかかる税金という昔のイメージから身近な税金になりつつある相続税。
令和3年分は被相続人143万9,856人のうち申告書を提出したのは13万4,275人、割合にして9.3%と基礎控除額の引下げ以降最高の課税割合となりました。

令和4年度租税及び印紙収入予算約65兆円のうち、相続税は2兆6,190億円と約4.0%に留まりますが、今後も増加傾向にあり、日本国にとって重要な税収であることに変わりはありません。

そんな相続税について、無申告事案や脱税事案が増えています。相続税の脱税について、そもそも脱税行為とは、どうしてバレるのか、バレたときの罰則などについてまとめてみました。

相続税の脱税行為とは?

まず税法において脱税という言葉は存在しません。定義規定が存在しない以上、脱税とはの詳細な議論は他書に譲りますが、税法においては一般的に「広義の脱税=重加算税課税」を指します。

重加算税については国税通則法第68条において次のように記載されています。
「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、」

そして国税内部の事務運営指針(税務署員が実務において判断指針とするもの)では、上記の「隠蔽し、又は仮装し」に該当するケースを例示として記載しています。

相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

上記の重加算税は行政罰ですが、これとは別に刑事罰として相続税法第68条に、偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れることをいうと規定されています(狭義の脱税はこちらを指します)。

このように、隠蔽(故意に覆い隠すこと)又は仮装(仮に他のものの姿を真似て装うこと、あたかもある出来事が実際にあったかのように見せかけること)に該当したり、偽りその他不正の行為により税金を免れることを脱税というと考えてよいでしょう。

税務署はどうやって脱税を把握するのか

国税総合管理(KSK)システム

KSKシステムとは、納税者の過去の申告状況や納税情報等を一元的に管理し、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなどの目的で導入した国税独自のシステムです。
これにより被相続人だけでなく相続人である家族などの情報も税務署は一目瞭然に把握することができますし、収入に比べて財産が多い少ないなどの当たりを付けることができます。

ヒアリング

税務調査が始まると、税務調査官は被相続人の生い立ちから仕事内容、趣味、資産運用、使っていた金融機関、性格など様々な質問を相続人に投げかけます。
これらは一見和やかな雰囲気で、厳しい税務調査とは関係のないように見えますが、そういう何気ない会話から税務調査官は申告漏れがないかを探っています。
彼らは相続税の税務調査だけを年がら年中やっており、申告漏れをあぶり出すポイントを熟知しています。

被相続人だけでなく相続人その他関係者の預金口座等も調査・把握できる(過去分も)

税務署が持っている権限は大きく、金融機関に口座情報の照会をかけることもできます。これにより、過去の入出金情報がすべて筒抜けになります。生前に大きな金額を引き出しているときにはそれを何に使ったか質問されると考えておいてください。
また、保険会社から保険金の入金があったときも税務署は保険会社からの支払調書により把握することができます。

課税・徴収漏れに関する情報提供フォーム

国税庁のホームページ上にある「課税・徴収漏れに関する情報の提供」により誰でも簡単に情報を提供できる仕組みがあります。こちらのタレコミから不正が判明することもあります。

脱税行為がバレたときのペナルティは?

税務調査等により脱税行為や本来あるべきよりも過少申告であることが明らかになったときは、下記のような税金のペナルティが課されます。なお、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税についてはいずれか1つだけが課されます。

延滞税

本来の納期限を過ぎてから税金を納付するときに課されます。利息に相当します。
具体的には、申告した税額を納期限までに納付していないときや、期限後申告や修正申告・税務署による更正決定等により、納付すべき税金が生じたときに課されます。

税率は、以下のとおりです。
・納期限から2か月までの期間 年2.4%(令和4年1月1日から令和4年12月31日までの特例税率)
・納期限から2か月経過後の期間 年8.7%(令和4年1月1日から令和4年12月31日までの特例税率)

過少申告加算税

本来の納税額よりも少なく申告をした場合に課されます。
ただし、税務署に指摘される前に自主的に修正申告をした場合は過少申告加算税が課されません。

無申告加算税

申告期限まで(相続開始から10か月以内)に申告をしなかった場合に課されます。


なお、令和5年度税制改正で、高額な無申告及び繰り返し行われる無申告についてメスが入り、納付する税金が300万円を超える部分については無申告加算税の割合が30%(税務調査の事前通知がきてから税務調査前に申告した場合は25%)に引き上げられる予定です(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用)。

このように、何らかの事情により期限内に申告しなかった場合でも、その後いつ申告するかによりペナルティの税率が変わってきますので、なるべく早く申告するのがよいでしょう。

重加算税

仮装または隠ぺいなどの不正行為があり、その行為に基づき過少申告をした場合や申告をしなかった場合に課されます。
追加で納付した税金の35%が課されます。
また、相続税申告を意図的にしていなかったとみなされた場合は追加で納付した金額の40%が課されます。

この重加算税を認めさせることが、税務署員は自らの人事評価に繋がるため、積極的に取りたいと考えています。単なる申告漏れなど法的要件を充足していないのに、半ば強引に納税者に不正行為と認めさせ、重加算税を取りにくる調査官もしばしば見受けられます。
このような場合にはしっかり法的根拠を持って、交渉してくれる税理士にサポートしてもらうのが良いでしょう。

刑事罰の可能性も

上記に加え、脱税額が高額かつ悪質な場合には、刑事罰が科される可能性があります。
偽りその他不正の行為によって相続税を免れた者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられ、または併科されます。

脱税の時効

相続税については、法定申告期限(相続開始から10か月以内)から原則として5年で時効が成立し、それ以降に申告漏れが見つかっても納税する必要はありません。
しかし、偽りその他不正の行為による場合は時効が7年に延びます。

違法な脱税ではなく合法的な節税を

上記のように、脱税行為をすると本来納付すべき金額よりも大幅に多いペナルティが発生するとともに、刑事罰も科される可能性がありますので絶対にしないでください。
法律の範囲内で納税額を軽減する節税とは大きく異なります。
相続税法に強く、納税者に寄り添い、積極的に提案してくれる税理士に相談されるのが良いでしょう。

また、相続税は一括現金納付が原則ですが、納付期限までに納付が困難な場合には、分割払いの延納や、土地や株式などの相続財産で納付に充てる物納という方法を選択することもできます。
これらの手続きは要件がありますので、お早めに税理士または税務署に相談されてください。

アクセス Access

FUJITA税理士法人 | 札幌本社 〒060-0907札幌市東区北7条東3丁目28-32
井門札幌東ビル4F
TEL:011-299-1100 / FAX:011-702-4034
事業所について右矢印アイコン