相続税の節税を目的とした不動産購入が最高裁判決で否認されました
不動産を評価する際には財産評価基本通達に基づき、土地は路線価という国税庁が公表している主要道路毎の金額をもとに評価を行い、建物は固定資産税評価額とするのが一般的です。
財産評価基本通達に基づく相続税評価額はいわゆる時価よりも評価額が通常低くなります。
こうした時価と財産評価基本通達に基づく評価額の乖離を利用した相続税対策が一般的に行われていますが、R4年4月19日の最高裁判決で財産評価基本通達に基づく評価額が否定され、鑑定額による評価額とすべき判断がされました。
この事案の不動産概要は下記の通りです。
(甲不動産)
➀不動産購入金額:8.3億
②借入金額:6.3億
③財産評価基本通達に基づく相続税評価額(納税者主張):2億
④鑑定評価額(国税主張):7.5億
(乙不動産)
➀不動産購入金額:5.5億
②借入金額:4.2億
③財産評価基本通達に基づく相続税評価額(納税者主張):1.3億
④鑑定評価額(国税主張):5.2億
2つの物件があり、③の財産評価基本通達に基づく相続税評価額と④の鑑定評価額(時価)に大きな乖離があることがわかると思います。
結果的には国税側の主張が通り、鑑定評価額での評価となりました。
なぜ、財産評価基本通達に基づく相続税評価額が否認されたのか大きな理由は下記の通りだと考えられます。
・本件は信託銀行の提案により行われたが、そのやり取りの履歴から節税目的であることが明らかであった
・財産評価基本通達に基づく相続税評価額が鑑定評価額の1/2以下であり金額に乖離が大きすぎた
今回の事案により土地の評価についてはより一層気を付けていかなければなりません。
詳しくは専門家に相談することをお薦めします。
執筆者:阿部 拓未