遺産分割確定前の不動産収入の帰属②

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前回の続きです。

遺産分割確定前の不動産収入の帰属①

前回②において、「1人で申告した方が納税者の負担すべき税負担が増す(多く税金を支払う)傾向にあるため、税務署側としてはあえて指摘する必要がない。」と述べましたが、これは所得税が累進課税(所得が多くなるほど税率も高くなる)となっているためです。

より分かりやすくするため、設例の一部を下記のように変えて「(A)法定相続分で申告」と「(B)母が1人で申告」のそれぞれを考えたいと思います。
■相続人:母及び子2人→母及び子4人
■賃料収入:2月から7月までの賃料合計300万円→600万円

(A)法定相続分で申告する場合
■母の申告内容
①賃料収入:600万円×1/2=300万円
②青色控除:65万円
③基礎控除:48万円
④課税所得:①-②-③=187万円

∴所得税額:89,500円(復興特別所得税を除く)、住民税は約192,000円

 

■子4人の申告内容
①賃料収入:600万円×1/2×1/4=75万円
②青色控除:65万円
③基礎控除:48万円
④課税所得:①-②-③<0万円 納税額なし

∴所得税・住民税の合計額:89,500円+192,000円+0円=281,500円

(B)母が1人で申告する場合
■母の申告内容
①賃料収入:600万円
②青色控除:65万円
③基礎控除:48万円
④課税所得:①-②-③=487万円

∴所得税額:546,500円(復興特別所得税を除く)、住民税は約492,000円

■子4人は申告なし

∴所得税・住民税の合計額:546,500円+492,000円+0円=1,038,500円

いかがでしょうか。
(B)の場合、所得税が累進課税であること、青色特別控除(65万円控除)が子4人も申告する場合はそれぞれ適用できる(5人合計325万円の控除)が母1人では控除額が65万円で終わってしまうこと、(A)では子4人の住民税が発生していないがその利益も母1人で申告するため余計な住民税が生じていること。これらの理由により100万円近くの税金が変わることとなります。

もちろん、「子に他の所得がある場合」や、「貸付規模が小さいため青色特別控除が10万円しか使えない」など前提が変われば納税額も変わります。逆に「子が既に1,000万円の所得があるため、子が納税した方が税負担が大きくなる」という事もありえますが、それらを税務署が細かく全て検討するというのも実務上困難かと思われます。

ただ、税務署が指摘してくるかどうかは別の問題ですので、本来は法定相続分に応じた申告が必要だということを覚えておく必要があります(もちろんそれに応じた賃料収入の分配も必要です)。

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執筆者:税理士 佐藤友一

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