相続税の申告は必ず税理士に頼まなければならない?
「相続税の申告は本当に税理士に依頼しなければならないのだろうか」
「税理士に支払うお金がない」
「自分で申告できないだろうか」
相続が発生したことがある方でこのように考えたことがある方はいませんか?
申告書の作成には労力がかかり、相続税という日々の生活ではあまり触れることのない税金の申告ではありますが、必ず税理士に依頼をしないといけないのでしょうか。
そんなことはありません。
相続税が発生しない人もいれば、税理士に頼まなくても多少の労力をかけてでも相続税の申告ができる人もいます。それではそもそも相続税の申告が必要な人と不要な人はどのように分かれるのでしょうか。また、税理士へ依頼すべきかどうかはどのように判断すればよいのでしょうか。
1.相続税の申告が不要な人とは?
相続税には、基礎控除額という控除枠が設けられています。相続した財産の額から債務などの金額を控除した額がこの枠内であれば相続税が発生しないため申告は不要となります。その基礎控除額は下記の算式により計算されます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
【例】故人Aさんの課税遺産総額(財産-債務)が4,000万円で、妻Bさんと子どものCさんがいる場合
■基礎控除額=3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
■4,000万円<4,200万円
∴相続税が発生しないため申告は不要
このように、故人の所有していた財産から借金などの債務を控除した金額が基礎控除額の枠内に収まっている場合は相続税の申告が不要となります。国税庁でも簡易判定シート(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashi.htm)が公表されていますのでそちらもご確認ください。
2.相続税の申告は必要だけど、個人で申告可能な人は?
例えば「不動産がなくて財産は預貯金のみ。手元に現金もないし生前贈与なども一切ない。税務調査があっても間違いなく問題ないはず」という方はご自身で申告されても良いのかもしれません。
申告書の作成方法は国税庁のHPにも掲載されていますし、それでも不明な場合は税務署の相談窓口で助言を受けながら申告することも可能かと思われます。
3.相続税の申告を税理士に任せた方が良い人は?
上記以外の方は基本的には税理士に任せた方が無難かと思われます。
土地を評価する場合は土地の形によって計算過程が変わるため単純に固定資産税の納税通知書から計算できるものではありませんし、生前に受けた贈与の取扱いや亡くなる前に預金口座から引き出した現金の取り扱いなど他にも検討しなければならない論点が多数あります。
財産の評価を過大にしていた場合は本来納めなくてよい税金を納付することになりますし、また、税理士に依頼をしないでご自身で申告書を提出した場合は税務署から税務調査を受ける可能性が非常に高くなります。税務調査が入り、申告内容に誤りがある場合、その追徴税額に対して延滞税なども発生するため結果的に払わなくて良い税金を納めることにもつながる可能性があります。
4.手続きも税理士に依頼した方が良い理由は?
相続税で税理士ができる業務は相続税の申告書作成や税務署への提出などの税務代理です。相続した財産を登記するための手続きは司法書士が行います。遺産分割でもめてしまった場合は弁護士立会いの下で遺産分割協議をすることもあります。それぞれが行える業務の範囲が決まっているため、税理士が弁護士や司法書士などと提携しているケースが多々あります。一人で相続に関する手続きをするよりも、税理士にまとめて依頼をすればその他の専門家を探す手間も省けてワンストップで相続に関する煩わしい手間を省くことができます。
いかがでしょうか。相続税は税理士に頼まなくても申告できる方もいますが、税理士に依頼をした方が後の税務調査対策なども含めてトータル的にメリットがあるのかなと思われます。