相続放棄をしても相続税申告が必要になる?
以前、ご対応したお客様で「相続放棄をしたから相続税申告は必要ないのではないか」と仰っていたお客様がいらっしゃいましたので、今回は相続放棄をした場合の相続税申告について記載したいと思います。
先に結論をお伝えすると、場合によっては相続税申告が必要になります!
(相続税申告は不要だと勘違いされている方は多いのではないでしょうか。)
なお、前提として相続税申告が必要になるのは相続財産が基礎控除を超えた時です。
相続財産が基礎控除以内の場合、相続税申告は不要です。
【相続税の基礎控除】
3,000万円+法定相続人の人数×600万円
※法定相続人の人数は相続放棄がなかったものとして計算します。
そもそも相続放棄とは?
相続放棄とは相続人という立場を放棄するものです。
つまり、プラスの財産・マイナスの財産どちらも相続しないことになります。
よくマイナスの財産だけを放棄できるのでは?と勘違いされている方がいますが、そうではありませんのでご注意ください。
相続放棄を希望する場合は、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てを行います。
相続放棄については、こちらの記事でもご確認ください。
プラスの財産よりマイナスの財産が多かった!
どんな時に相続税申告が必要になる?
相続放棄をして相続財産を受け取っていないのに、相続税申告が必要になるのは何だが腑に落ちませんが、以下の場合には相続税申告が必要です。
1.死亡保険金・死亡退職金を受け取った
死亡保険金や死亡退職金は民法や判例上、受取人固有の財産として相続財産には含まれないと考えられていますが(死亡退職金は受取人が決まっていない場合、相続財産になります。)、相続税法上は「みなし相続財産」として扱われます。
よって、死亡退職金や死亡保険金を受け取ると、相続財産を受け取ったとして相続放棄をしていても相続税申告が必要になります。
また、死亡保険金や死亡退職金には非課税枠(法定相続人の人数×500万円までは相続税が課税されません。)がありますが、相続放棄をすることで相続人ではなくなるため非課税枠は使えなくなります。
2.相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けていた
相続時精算課税制度で生前に贈与を受けていた場合、贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税を計算するため、相続放棄をしていても相続税の申告が必要になります。
(生前贈与を受けていた方でも相続放棄すること自体は可能です。)
相続放棄は慎重に!
他の相続人と関わりたくないからといって相続放棄をされる方がいらっしゃいますが、亡くなった方の相続税申告が必要な場合は、相続放棄された方でも相続税申告をしなければならないことがありますので、慎重に検討していただきたいと思います。
なお、相続放棄はあとから撤回が出来ませんのでご注意ください。