土地の賃貸借と使用貸借の違い②
亡くなった方が自分で使用していた土地(自用地)よりも誰かに貸している土地(貸宅地)の方が相続税の評価額が低くなると聞いたことはありませんか。
実際、貸宅地の評価は以下のように行い、自用地の評価額に借地権割合を掛けた分を控除できるため、自用地の評価額より低くなります。
自用地としての評価額-自用地としての評価額×借地権割合
それでは、亡くなった方が誰かに無償で土地を貸していた場合も上記と同じように評価しても良いのでしょうか。
使用貸借とは?賃貸借との違い
使用貸借は無償で貸し借りしていることをいい、民法では以下のように規定されています。
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる
使用貸借では貸主が死亡した場合、契約は終了せず(契約で期間を定めていた場合を除く)、土地を相続した相続人が貸主の地位を承継しますが、借主が死亡した場合は、契約が終了することになります。
なお、使用貸借で土地を借りている相続人が土地を相続した場合は、貸主と借主が同一人物になるため、使用貸借は終了します。
これに対して賃貸借は有償で貸し借りしていることをいい、民法では以下のように規定されています。
なお、使用貸借とは異なり、借主は地代や権利金を支払う代わりに借地権を取得し、借地借家法で守られます。
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
上記の例では、亡くなった方が無償で土地を貸しているため、賃貸借ではなく使用貸借となります。
使用貸借していた土地の相続税評価(借主が個人の場合)
相続税評価をする場合、使用貸借で貸付されている土地は自用地として評価をし、賃貸借で貸付されている土地は貸宅地として評価します。
これは、賃貸借では借主に借地権が与えられるため、貸主の権利が低くなると考えられるからです。
つまり上記の例では、評価対象地を貸宅地ではなく自用地として評価します。
このように、使用貸借か賃貸借かによって相続税の評価額が変わっていきますので、相続税の評価をする場合は気を付けなければなりません。
また、使用貸借から賃貸借に変更すれば、相続税を節税できるのではと考える方もいるでしょう。
賃貸借契約に変更したとしても、借地権の贈与があったとして贈与税が発生することになります。
また使用貸借から賃貸借に変更するためには、単に地代を支払えば良いのではないため、専門家に相談することをおすすめします。
最後に
相続の場面では家族間で土地を使用貸借している(親が子供に無償で土地を貸している)ケースがよくあります。
使用貸借は口頭でも成立するため、契約書がないことが多く、契約内容を巡ってトラブルになることがありますので、使用貸借している土地を相続する前に契約内容を確認しておく必要があります。
また地代分として借主が貸主の代わりに固定資産税のみ支払っているというケースもありますが、この場合、固定資産税は地代として認められず、通常の経費として判断され、賃貸借ではなく使用貸借として扱われるため注意が必要です。