生前に預かっている葬儀費用や生活費は誰のもの?
相続が発生しそうな状況の時、相続人の方が気になる事の一つに葬儀費用の支払いがあります。もちろん不幸なことは起こってほしくありませんが、ご病気で入院されている場合など、葬儀を意識しなくてはならない時があります。
事前に葬儀費用として現金を預かっている方もおられますが、亡くなられる直前で預金口座から引き出して用意しておく方もいらっしゃいます。
さて、この引き出しておいたお金はどのような扱いになるのでしょうか?
〇贈与の考え方
贈与とは、贈与する方があげるという意思表示をし、受ける方がもらうという意思表示をして初めて成立する契約です。これにより所有権が移ります。
〇葬儀費用
葬儀費用を事前に預かっている場合は、贈与で渡したわけではなく預かってもらっているため、何年も前の預かりだとしても贈与には該当しません。また、亡くなられる直前に引き出したお金も同様に贈与されているとは言えませんので、こちらも預かっていると考えるのが妥当です。
この葬儀費用(預り金)は亡くなられた方(被相続人)の財産として、相続の際に分割対象財産となり、相続税の申告対象となる財産になります。
〇生活費(食事代・病院代・消耗品代など)
生活に火ついてもよく相談で出てきますが、例えば親と同居しており毎月生活費をもらっていた場合、親の介護をしており都度生活費を引き出して使っていた場合、高齢になったからと親から財産管理を任された場合などです。
上記のような場合、基本的に贈与が成り立つ状況ではありませんので、預かったお金が被相続人のために使用されていない金額については、預り金となる可能性があります。
特に介護などで生活費を預かっている方は、その他の相続人に対して証明できるよう準備しておかないと、相続の際に不仲になってしまうパターンもあります。
〇配偶者の財産
配偶者の財産についてもたまに相談ででてきます。夫婦のお金のやり取りの方法として、ご主人の給与を専業主婦である奥様の口座に移して管理されている方がおります。稀に、相続発生時にはご主人の財産より奥様の財産の方が多いという方もいらっしゃいます。
このお金のやり取りの場合は、奥様名義の口座にご主人の財産を預かっている状況となり名義財産として相続の際に分割対象となり、相続税の申告対象となる財産に該当する場合があります。
上記のような預かり財産を理解しておかないと、遺産分割がスムーズにいかない場合があります。また、相続税の申告が必要かどうかの重要な判断材料になります。
相続に関するご相談や相続税については、札幌を含む北海道エリアで相談対応をしているFUJITA税理士法人へお問合せ・ご相談ください。
執筆者:阿部 拓未