区分マンションの相続税評価方法改正の通達案が公表されました
岸田政権による増税策が相次いでいますが、相続税についても同様に増税となる動きが続いています。
節税目的で購入した不動産(1棟モノ)の相続税評価を巡り、令和4年に最高裁で国税勝訴となった事案は業界内外に大きな影響を与えましたが、今回は全国的に高騰が続いている区分マンションの相続税評価にメスが入ります。
そもそも相続税法第22条では評価の原則として、相続税評価額は「財産の取得の時における時価による」とされていますが、特に一物五価とも言われる不動産は、実際に売却してみないと(厳密にいえばそれも本当に時価か疑問ですが)時価がわからなかったりしますので、それだと納税者は税金の予見可能性を確保できずに困ってしまいます。
そのため、国税庁は課税上弊害がある場合を除き、実務ではこれで評価していいですよという財産評価基本通達を定めており、通常はこれによって評価しているというのが実態です。
これまでの評価方法
区分マンションの建物:一室の固定資産税評価額
区分マンションの敷地権(土地):敷地全体の評価額×共有持分(敷地権割合)
※賃貸用でなく自用を前提としています。
改正案
国税庁は令和5年7月21日に、マンションの相続税評価額の算定方法を新たに定める「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)の意見募集を開始しました。
通達案は令和6年1月1日以降の相続・遺贈・贈与に適用される予定です。
改正案を読むと、評価乖離率の算定方法など非常に複雑でわかりにくいのですが、簡単に説明しますと、現行の相続税評価額が、築年数や所在階数などから計算される市場価格の理論値の6割を下回る場合は、その理論値の6割で評価するということになります。
以下に、評価の概要だけ参考までに記載しておきます。
一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額
「自用地としての価額」に、一定の補正率を乗じて計算した価額を当該「自用地としての価額」とみなして評価する。
一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額
「自用家屋としての価額」に、一定の補正率を乗じて計算した価額を当該「自用家屋としての価額」とみなして評価する。
執筆者:藤田 賢