贈与税と相続税 どっちで支払う方が得?・・・②
前回は下記のケースをもとに、暦年贈与による相続税対策とそれに伴う生前贈与加算について触れました。
■贈与をする人の年齢は75歳で預金は1億円保有→本日の設例を分かりやすくするために1憶5,000万円保有へ変更
■相続人になる人は配偶者と子2人
■それぞれに年間110万円ずつ、仮に85歳まで毎年贈与を続けた場合の贈与累計額は3,300万円
■亡くなった時点の預金残高は1億5,000万円-3,300万円=1億1,700万円
■生前贈与加算として990万円が相続財産に加算されるため、相続税の課税対象は1億1,700万円+990万円=1億2,690万円
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この場合の相続税は約900万円(①)になります。
それでは、毎年の贈与額を110万円ではなく310万円にした場合はどのようになるのでしょうか。
■贈与累計額3,300万円→310万円×3人×10年間=9,300万円
■亡くなった時点の預金残高は1億5,000万円-9,300万円=5,700万円
■生前贈与加算として2,790万円(310万円×3人×3年)が相続財産に加算されるため、相続税の課税対象は5,700万円+2,790万円=8,490万円
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この場合の相続税は約400万円(②)になるため、相続税の負担は約500万円減少することになります。ただし、詳細は省きますが310万円の贈与を受けた場合は20万円の贈与税が発生するため、10年間で20万円×3人×10年=600万円の贈与税(③)を納めることになってしまいます。これだけ見ると、②+③=1,000万円の税金が発生するため110万円ずつ贈与をした方が有利のように思えます。しかし、生前贈与加算に対応する贈与税は相続税(②の金額)から控除して納めることができます。これを贈与税額控除といいます。この例の場合は20万円×3人×3年=180万円が贈与税額控除(④)となりますので、最終的には②+③-④=820万円が納める金額の合計額となります。
結果、900万円を納めるよりも820万円の方が有利となりますが、これは80歳で亡くなった場合と90歳で亡くなった場合では当然金額も変わってきます。贈与を開始して3年以内に亡くなった場合は結果変わらないことになりますし、90歳まで贈与を続けることが出来ればそもそも相続税の申告が不要になるかもしれません。
暦年贈与を行う場合は「何歳まで生存するか(何年間贈与をし続けることが出来るか)」というのも一つのポイントになりますが、誰にも分かりえない部分になってしまいますので金額や効果などを慎重に検討したうえで対策を検討する必要があります。
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執筆者:税理士 佐藤友一