タワマン節税について①~その効果~
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タワーマンションを購入し、相続税評価額を下げ、節税する一連のスキームをタワマン節税といい、相続対策として注目を集めた時期がありました。しかし、①マンション評価額を評価通達ではなく購入価額により評価することが支持された東審平成23年7月1日裁決、②平成29年税制改正によるタワーマンションの固定資産税評価額の見直し、③タワマン節税を注視している国税庁の動向、等からタワマン節税はもう意味がないと考えている方もいるようです。
確かにタワマン節税はもはや安泰ではありませんが、その効果も非常に大きいため、税務否認等のリスクを踏まえた上で、検討する価値はある内容だと思われます。
今回はまず、そんなタワマン節税の仕組みを解説したいと思います。
<タワマン購入により相続税評価額が下がる>
相続税が発生する場合、亡くなられた方の財産(相続財産)は、財産評価基本通達に基づき評価され、その財産額に応じて累進課税制度(財産額に応じて税率が高くなる仕組み)に基づき相続税が計算されます。タワマンを購入することにより、以下の理由により財産の相続税評価額を下げることができるといわれています。
①土地・建物は評価額が低くなる(一般的な不動産)
一般的な不動産の場合、土地と建物に区分して相続財産評価をすることになりますが、土地と建物の相続財産評価額と時価には大きなかい離があります。土地については路線価方式で評価をしますが、路線価方式は実勢価格の70~80%程度といわれ、建物については固定資産税評価額により評価をしますが、固定資産税評価額は実勢価格の60~70%程度と言われています。
②高層タワーマンションは①がより顕著
マンションの評価額についても土地と建物に区分して評価しますが、総戸数の多いマンションの場合、各戸の持ち分は非常に小さくなり、土地の評価額は小さくなります。また、建物の評価額についても、一般的に高層ほど取引価格が高く、低層ほど取引価格が低くなる傾向にあり、タワーマンションの中には専有面積が同じであっても低層と高層で3倍以上取引価格に差がある場合も少なくありません。しかし、建物の相続税評価による低層と高層の金額差は微々たるものとなっています。(平成29年以前は低層と高層で評価額が同じでした。)結果として、 タワーマンションの相続税評価額は時価と大きくかい離することとなります。
③他人に貸し付ければより評価額を下げられる
高層タワーマンションの建物の評価額については、他人に貸し付けることによりさらに30%評価額を下げることもできます。
上記①②③の理由により、現預金を保有しているよりもタワーマンションを保有しているほうが相続税評価額を2~5分の1ほどに圧縮することができるといわれています。
仮に相続人が1人で現預金のみを2億円持っていた場合、概算で4860万円の相続税が発生します。これに対し、相続人が1人でタワーマンション(2億円で購入したが5分の1の相続税評価額と仮定)のみを持っていた場合の相続税は概算でわずか40万円となります。
決して安泰とは言えないタワマン節税ですが、その効果が大きいのも事実です。否認リスクを最小限にするために、実際に試算・運用する際は専門家にご相談することをお勧めいたします。
執筆者:関口