税務調査で問題になりやすい論点④ ~名義保険~

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税務調査で問題になりやすい論点として名義預金や名義株のように契約上の権利者と実際に金銭を拠出した人が異なるものについて触れましたが、他にもう一つよくあるものとして名義保険があります。名義保険とは、保険の契約者は子であるけれども親がその保険料を支払っているような保険です。これだけを見ると「そんなのよくあるだろう」と思われた方も多いと思います。例えば学生である子供のために親が子供名義で掛け捨て型の医療保険を契約して保険料を支払っているというケースが考えられますが、これについては相続税の課税対象になりませんのでご安心ください。相続税は相続開始時において金銭価値のあるものを評価するのですが、掛け捨て保険については解約返戻金や満期返戻金がありませんので評価をする必要がない(というよりも評価をすることが出来ない)ためです。相続税で問題になるのは掛け捨て型の保険ではなく積立型の保険(満期時若しくは途中解約で返戻金があるもの)になります。保険料は月々支払っているケースもあれば一括で支払っているケースもあり、支払い方法は問題にはなりません。その親(被相続人)以外が契約者となっている保険について親が亡くなったときに返戻金として受け取ることが出来る金銭がある場合にそれを相続財産とみなして申告をする必要があります。

 

それでは、例えば親が一時払い保険料として1千万円の積立型の保険に自分名義で加入し、その後子に契約者を変更した場合は相続税や贈与税の取扱いはどうなるのでしょうか。この場合も相続財産になるため相続税の申告が必要となりますが、注意点としては契約者の名義変更をしただけでは贈与税は発生しないということです。親が亡くなる前に子がその保険を解約して若しくは満期をむかえて返戻金を受け取った場合はその時点で贈与税が課されることになりますが、契約者を変更しただけでは子はまだ金銭を取得していませんので贈与税が課されることはありません。

 

保険は契約者・保険料の負担者・被保険者・受取人の関係により所得税か贈与税か相続税かいずれかの課税対象になりえます。ただ、その保険料を誰が支払っていたのかを税務当局が把握するのは困難であるため申告漏れとなっているケースも多々あったのかと思われますが、この申告漏れを防ぐために保険会社が国税庁に提出している「生命保険契約等の一時金の支払調書」が2018年1月に改正されています。その改正のポイントとしては、契約者が死亡して保険の契約者が変更された場合についても支払調書を税務署へ提出するようになったことと、死亡以外の理由で契約者を変更していたとしてもその履歴を支払調書へ記載するようになったことです。これにより誰が保険料を負担していたのかなどを推定する資料を国税庁が取得できるようになったため、今後は申告漏れがあった場合に指摘されることが格段に増えることが予想されます。

 

契約者が被相続人ではない保険であっても何かしらの課税関係が生じる可能性がありますので、保険についても慎重に取り扱う必要があります。

 

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執筆者:税理士 佐藤友一

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