税務調査で問題になりやすい論点① ~相続開始直前の現金引き出し~
申告書の作成時には亡くなった方の預金通帳の流れを確認するのですが、「亡くなる直前に数百万円引き出している」というケースはよくあります。
引き出すこと自体はまったく問題がないことで、口座が凍結される前に葬式費用や当面の生活費のために引き出しておこうと考えることは自然なことです。
ただし、この引き出したお金が手元にある場合、相続税の申告では「現金」として申告する必要があり、この金額について正確に把握して申告書を作成しなければなりません。
相続開始直前という言葉を使っておりますが、例えば1年前に引き出して手元に置いておいた現金(いわゆるタンス預金)だとしても申告の必要はあります。
それではよくある3つのケースについて記載してみたいと思います。
なお、財布に残っている現金などはこれに加算する必要があります。
<ケース1>
相続開始直前に300万円引き出しているが一切手をつけていない場合
→この場合は300万円の現金が残っているので申告額は300万円になります。
<ケース2>
相続開始直前に300万円引き出して、その一部を病院代(仮に30万円とします)などの支払いに充てた後に亡くなった場合
→この場合は300万円-30万円=270万円が手元に残っているので、申告額は270万円になります。
ただし、預金通帳では300万円の引き出しとなっているため、客観的には300万円の現金が残っていたのではないか?と疑われる余地があります。
そうならないためにも「何に使ったのか」というのが分かるように、領収書を残しておくか現金使途表などを作成して残しておくことをお勧めします。
<ケース3>
相続開始直前に多額の引き出しは見当たらないが、数年前から少しずつ引き出して実際に300万円残っていた場合
→この場合はもちろん300万円の申告が必要ですが、客観的には判断しづらいため相続人の方の協力が必要となります。
過去の預貯金の流れを確認して手許現金がないかなど相続人の方へ聞き取りを行っているのですが、通帳の流れだけでは判断がつかない金額になることも稀にあります。
過去に引き出している金額(800万円)から生活費等で使ったであろうと考えられる金額(500万円)を差し引いた額が申告額(300万円)と比べて概ね不自然ではないかなど慎重に判断する必要があります。
税務調査で申告漏れとして最も指摘されているのが「現金・預貯金等」です。
現金については客観的に判断できる部分とできない部分がありますが、後々の税務調査対応などを考えると正しい金額を最初から申告しておくことが大事ですね。
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執筆者:税理士 佐藤友一