お金持ちだけの話じゃない! 信託のイメージを覆そう!!
「信託」という言葉を聞いて、皆様はどのようなイメージを持ちますか? おそらく、「信託銀行」や「投資信託」といった、資産運用に関するものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。資産運用の話であれば、そもそも興味がないという方もいらっしゃるでしょうし、「お金持ちだけの話でしょ?」という声も聞こえてきそうです。
まずこのイメージを覆すところから始めていただきましょう。「信託」とは、資産運用に限った話ではありません。そして、大きな資産をお持ちの方だけに関係するものでもありません。むしろ、すべての方々が利用できる、とても身近な制度なのです。
では、どのような場面で利用することができるのでしょうか。それは、主に「相続」や「財産承継」といわれる場面です。
すべての人に、人生の終わりは訪れます。そのとき、自分が持っていた財産は、必ず誰か(個人や法人、任意の団体ということもあるでしょう)の元に遺されますが、やはり皆さんが関心をお持ちになるのは、(1)誰に(2)どのように財産をバトンタッチしていくのかという点でしょう。なぜなら、財産承継とは、単に財産が動くだけではなく、皆さんの最期の想いが実現される場面だからです。
その想いとは、当然のことながら一通りのものではなく、十人いれば十通りあると行っても過言ではありません。この千差万別とも言える想いを実現するために、「信託」は無限の可能性を秘めているのです。
法改正がもたらしたものとはどんなものでしょう。信託の制度は、信託法という法律でその仕組みが規定されています。この信託法、実は平成18年12月に法改正がありました(平成19年9月施行)。一般の方々にとってまだまだ馴染みが薄いためか、当時もメディア等で取り上げられることは、あまりなかったように記憶しています。
しかし、私たち法律家にとって、この法改正は相続や財産承継のあり方を大きく変える、まさにイノベーションでした。なぜならば、皆さまの想いを遺す方法として最もポピュラーな「遺言」や、判断能力が落ちた方の財産を管理する「成年後見制度」などと比べて、より自由度が高く、柔軟な財産の承継スキームを組み立てることが可能になったからです。つまり、それまでの法律では実現不可能だったお客様の想いを、信託を活用することで実現できるようになったのです。
さて、信託に関するイメージを払拭していただいたところで、「じゃあ、そもそも信託って何?」「どんな仕組みのことなの?」という疑問にお答えしましょう。
信託とは
(1)自分(=委託者)の財産(現金・不動産・有価証券etc…)を
(2)信頼できる人(=受託者)に託し
(3)誰か(=受益者)のために
(4)あらかじめ定めた目的に従って、管理・処分してもらう財産管理・財産承継の手法を指します。
ここで、重要なキーワードが出てきましたので、是非覚えておいてください。財産を預ける人の事を「委託者」、預けられた人の事を「受託者」、預けられた財産から出た利益を受ける人を「受益者」といいます。信託は、常にこの三者によって成立する仕組みなので、このことは常に頭に置いておきましょう。