自己申告の場合の注意点 ~相続税申告をご自身でやろうとする方向けに~

相続税申告は数ある税務申告の中でも、最も税務調査が入りやすく、最も追徴課税の金額が大きい税務申告となります。また、税理士であっても相続税申告は受け付けない事務所があるなど、税法としても複雑なものとなっています。そのため、相続税申告について、本を何冊も読み、国税庁のHP等で調べものをする時間・エネルギーがない方は最初から自己申告をあきらめ、税理士に依頼することをお勧めいたします。また、時間・エネルギーがある方も、後々の調査の可能性、自己申告による評価額の過大評価及び過大納税の可能性を考えた場合、やはり税理士に任せた方がいいケースがほとんどであることをお伝えいたします。ただ、それでもやはり時間・エネルギーを使い、自己申告にこだわりたい、そんな方々の参考になるような、申告上の基本的な注意点について述べていきたいと思います。

■小規模宅地等の特例は当初申告要件

 相続税評価額の中で土地の評価額が占める割合は非常に高く、都市圏の場合、資産のほとんどが不動産であるケースも珍しくありません。そんな高額な土地の評価額を引き下げる特例として小規模宅地等の特例がありますが、この特例は当初申告要件を前提としています。仮に自己申告による期限内申告で小規模宅地等の特例を適用することを怠り、後々税理士に相談し、適用することができたことが判明した場合でも、もう手遅れで更正の請求により、納め過ぎた税金を取り戻すことはできません。小規模宅地等の特例は適用要件が毎年変更しており、かつ要件が複雑であることから、本当に適用要件を満たしているか否かの判断は慎重にする必要があります。

■名義預金・生前贈与加算

 自己申告の場合に一番問題になりやすいのが名義預金・生前贈与加算の論点だと思われます。理由としては、亡くなられた方が相続対策として一見簡単にできる生前贈与を実施するが不備が多く見られる傾向にあること、税務署は相続関係人の通帳履歴を自由に見ることができるため指摘がしやすいこと、自己申告の場合に特に不備が多い傾向にあること、が挙げられると思います。

 また、相続開始前3年以内に相続人に対して行われた贈与は、相続財産に計上しなければなりません。この点も抜けが多いため、ご注意ください。

■2次相続を考えた遺産分割

 これは適正な申告書の作成とは別の論点ですが、特に1次相続(夫婦の片方が亡くなった相続)の際に配偶者控除の特例を使用する場合にトータルの相続税額を抑えるため(ケースによっては数百万円から数千万円の違いがでます)に注意が必要な内容となります。

具体的に言えば、税理士に相談せずに自己申告をする場合、1次相続の際に1次相続の税額を低くするために配偶者控除を使用する傾向が強いですが、その場合、1次相続と2次相続(1次相続後の寡婦(例えば未亡人)の相続)の相続税の合計額は多くなる傾向にあります。これは1次相続で配偶者が財産のほとんどを取得した場合、2次相続時の被相続人の財産額が1次相続で取得した財産と自分自身で築いてきた財産の合計額となり、高額でかつ2次相続の基礎控除額は1次相続時よりも少ないため、累進課税(財産が多いほど税率が高いこと)で2次相続の相続税額が高額となってしまうからです。

 いずれにせよ、配偶者控除を使用する際は1次相続だけでなく、2次相続を踏まえた遺産分割をしっかりとシミュレーションすることがトータルの相続税額を抑えるためには必要です。

■不動産評価 路線価×面積では損

 自己申告で土地の評価をする際、多くの方は土地の評価を「路線価×面積」で計算すると思います。ただ、土地の評価は使用方法、形状、実際の立地条件、周囲の環境等により様々な減額評価が認められているため、特に土地の評価額が高額となる都市圏の相続の際に注意が必要となります。場合によっては評価額に数百万から数千万円の差異がでる土地の評価ですが、通常の税理士では知らないような評価方法もあるなど、かなり難易度は高いと思います。土地の評価額が高額な場合には、やはり土地の評価に精通している税理士に任せたほうが得策かもしれません。

■債務控除できない債務・葬式費用

 相続税評価額から控除できるものとして、被相続人の債務や葬式費用があります。ただ、全部が全部控除できるわけではなく、例えば葬式費用の中でも、初七日法会費用や永代供養代等、控除することができない項目があります。

 以上で述べた内容は自己申告する上で問題となりやすく、かつ税務調査による多額の追徴課税となりやすい項目となります。相続税の追徴課税とそれによる延滞税は一般的に高額となる傾向があるため、自己申告の際は細心の注意を払い、申告いたしましょう。