亡くなられた方が賃貸業を営んでいる不動産オーナー又は農業を営んでいた方であった場合、不動産の相続財産全体に占める割合は非常に高くなることが想定されます。また、相続財産の中で不動産が多く、逆に現預金が少ない場合には納税資金を確保することが困難となり、場合によっては延納・物納といった納税方法も検討する必要があります。今回はそんな不動産オーナーと農地オーナーが亡くなられた際の注意点を記載いたします。
知識と経験が豊富なら土地の評価額は下げられる可能性があります
~生前対策編~
生前であれば、また長期間対策をとれる時間があるならば、計画的に節税対策を実行することにより土地の評価額を大きく下げることが可能となります。ただし、土地の相続税対策は難易度が低いものから例えば借入金をする等の難易度の高いものまで幅広く方法があるため、その家族に合った相続対策を税理士等の専門家を交えてご家族全員で話し合うことをお勧めいたします。下記では土地の上に建物を建て貸し出すことによる評価減等の代表的な土地の生前対策等を記載しております。いずれにせよ、土地の相続対策では後々問題になりやすい論点が多いため、税理士等の専門家を交えた話し合いにより計画を作成することをお勧めいたします。
- 一筆の土地を分筆する
- 貸地について、底地の売却、借地権の買い取り、借地権と敷地権の交換、借地権と底地権の共有売却、をする
- 生産緑地について、広大地廃止による新制度方式による評価額を予め検討し、場合によっては対策をとる
- 賃貸建物を建設し、持ち分を暦年贈与により子や孫に移す
- 賃貸建物とその土地を法人へ現物出資し、数年後の株式評価額の低い段階で子や孫に持ち分を贈与又は売却する
- 収益性の高い賃貸建物・土地を相続時精算課税の利用により、子や孫に贈与する
知識と経験が豊富なら土地の評価額を下げられる可能性があります
~相続発生後編~
相続財産として不動産を評価する際には数多くの注意点があります。一般的な「路線価×地積」の評価方法では場合によっては何百万、何千万円もの税金を多く納めることとなりかねません。
また、土地を相続した場合、相続税申告後に使える下記税制上の優遇措置があるため、その活用もあらかじめ検討・計画しましょう。
1. 取得費加算の特例
相続した財産を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、その相続人の相続税のうち一定額を売却財産の取得費に加算することができるという趣旨の特例が相続税の取得費加算の特例です。一般的に高額となる譲渡所得税を抑えることができる優遇措置となるため、売却を検討する場合は相続税の申告期限から3年以内を一つの目安としましょう。
2. 空き家特例
相続開始日から3年を経過する日の属する12月31日までに、亡くなった方が住んでいた家屋を相続した相続人が、その家屋(耐震性のない家屋は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地も含みます)又は家屋を取り壊した土地を譲渡した場合に、その家屋・土地の譲渡所得から3000万円を特別控除することができるという特例です。短期譲渡所得の場合、最大1,170万円(所得税・住民税合計39%として算出)の節税ができる優遇措置となるため、こちらも売却を検討する際は慎重に検討しましょう。